ああ、新花巻図書館
2025.3.20
突然だった。3月6日、花巻市は新花巻図書館の建設地は駅前に決定すると表明した。前日まで花巻市議会定例会で、建設場所について市当局を鋭く追及する本舘憲一議員、伊藤盛幸議員、羽山るみ子議員の一般質問が行われた次の日である。質問の答弁も適当にかわしていたのか、失礼な。3月15日の市広報にも大きく、市にしては異例の迅速さ。新花巻図書館の建設地問題について、これまでの経過を説明する。
現在築50年、老朽化した花巻図書館の新築移転計画は2011年に出て、2016年の国の補助金が出る「立地適正化計画」では新花巻図書館の建設地は、まなび学園周辺(病院跡地、以下跡地)と記載されていたが、2017年「新花巻図書館整備基本構想」として駅前も含める政策に変更された。2017年から10回、市とJR東日本との間で行われた会議からと思われる。
駅前の候補地とは、現在も営業中のタケダスポーツのJR用地。そして2020年1月の新聞報道に市民は驚いた。駅前に住宅付き図書館という市の計画。これは紫波町のオガール複合施設を成功させた岡崎社長の提案だった。JR用地が賃貸50年ならマンションの賃料でという案に市長は乗った。岡崎氏は会議には3回参加し、市からのアドバイザー料は500万円。この計画は「新花巻図書館を考える会」の陳情書や議会で新図書館特別委員会が設置され9か月かけて協議し、市は白紙撤回した。
「考える会」は市民の跡地への声の多さを市長要望したが、駅前の説明ばかりで伝わらず署名活動を行って2200筆市長に提出した。署名への対応はなかった。市長はなぜ駅前に執着するのか?JRと何かあるのか?と市民はみんな疑問に思っている。
そこで、市とJRの会議の記録文書を開示請求で入手した所、100頁以上の半分近くが黒塗りだった!市民に知られたくない不都合があるの?市は花巻駅橋上化とセットで図書館も駅前にと密かに交渉してきた。JRは駅前の活性化を期待するが、以前市民の質問に副市長は図書館で駅前の活性化にはならないと答えた。それは市がUR都市機構に調査を依頼して、花巻駅前は商業的発展の可能性は低いという結果も出ていた。複合施設でない図書館単独は収益を見込めない文教施設だ。では、JRのメリットは何だろう?
2021年12月市議会の特別委員会が市に提案した条件は、①できる限り低予算で。立地決定は市民の理解と賛同をしっかり得ること ②市有地に建てること ③単独だが軽食喫茶等の憩いスペースは可。
2022年10月、市は市内17か所で市民説明会を行い、初めて駅前用地取得交渉を表明したが、圧倒的に駅前反対・跡地賛成が多かった。私は各地区参加して、市の計画に市民の意見が通らないことに危機を感じ、2023年1月仲間と「イーハトーブ図書館をつくる会」を立ち上げた。設立シンポジウムでは、宮沢賢治の里にふさわしいのは跡地、と様々な観点から郷土を愛する熱い意見が多く出た。その後も市長要望や陳情等で市と話合いをしたが暖簾に腕押し。もう署名で声を伝えるしかない!と市民三団体結束した。
全国の花巻・賢治ファンにも署名を呼びかけ、市内で毎月街頭署名、1軒1軒ノックして説明して歩いた人も。1年かけて10282筆を2回に分けて市長に提出したが、2回とも市長は多忙を理由に直接の受け取りを拒否。そして、この3月議会で署名を自分は見ていないと平気で言った。「部署に分析させたら、同じ筆跡もあり市民は6000人だけと聞いた」と。市民がまちを想い苦労して集めたことに感謝どころかケチをつける?同じ筆跡は家族、こちらの統計では市民7285人、市外県外が2997人の応援署名だ。花巻名誉市民第1号の宗教学者山折哲雄氏もいる。
市は「両地がいくらかかるかの比較がないと決められない」という声に、2024年1月外部委託した「事業費比較調査」は9ヵ月間1800万円!時間もお金もかかり過ぎ、血税である。調査の結果は総事業費が駅前39.3億円、跡地が36.3億円なので跡地が3.6億円安い(市負担は1.2億円安い)。ならば委員会の条件の安い方で決めればいい。しかも線路脇の騒音や振動、変電所の電磁波の問題は未調査。
更に昨年11月から市民の意見集約に市民会議というのを開催した。慶応義塾大学教授を招いて無作為で抽出した3500人に郵送して希望した75名で両地のメリット・デメリットを話し合う。その予算が1000万円。会議自体は参加者の図書館への関心が上がってよかったが、(抽選にもれた)傍聴者は縄が張られた外側で会議の声も聞こえず様子ものぞけず、発言もだめという異様な雰囲気だった。そして市は署名の市民7285人の声より、65人(実参加数)の意見で駅前に決めた。
だが分析結果をよく見ると、重要項目から落とされた項目こそ駅前より跡地が多い。「アクセス」と「活性化」の重要項目は駅前が多いというが、「駅前は停めにくい、怖い」という高齢者や子育てママの声もあり、跡地から上町につづく散歩道は停滞した中心商店街の活性化になる。
「他施設との連携」の項目も、跡地は生涯学習や子どもセンターのあるまなび学園と連携しやすい。
「文化・歴史」の項目は断然跡地で、賢治と妹トシゆかりの学校があったし、花巻城址も近い。「費用」も跡地だ。今の3倍の新図書館の維持を人口減少による次世代の税金負担を心配する高齢者は図書館ボランティアも厭わない。「高齢者のための図書館なら今のままでいい」と議会で発言をした市長は高校生や若者の利用率UPに駅前と言うが、振動や騒音でうるさいと反対する高校生も多い。
「駐車場」は跡地の広さと立地が抜群、市の花火大会や花巻まつりで元ヨーカドーの駐車場満車で買物客の迷惑を看過するのか。駅前はゲート付駐車場になり、有料と無料のすみわけや近隣イベントで満車・渋滞も心配。駅前周辺の住民の意見集約も説明もないまま駅前を選択したのはおかしくないか。
「周辺環境」は花巻には凄腕ガーデナーが多くいる。広い跡地で賢治の物語の木を植えてベンチを置いたら、自然と人は集まり、市民提案のイベントやマルシェもできる。それが花と緑のまち宣言、オーガニック・ビレッジ宣言をした花巻らしい。
市長は駅前に費用対効果(コスパ)を主張するが、文化・芸術・教育はその範疇ではない。想像力、感性、人生の指針を与えてくれるのが図書館だ。
今後議会で予算が可決されたら駅前決定(泣)議員は、行政の監視と監査(税金が適正に使われているか)、市民の声を聞いて市政に反映できるよう行政に声を届ける役割を果たしてほしい!と期待する。地方政治も国政も、住民の声に耳を傾ける候補者を選挙でしっかり選ぼうよ!
今さら無理だと言われようと、「地域と共に、地域の信頼を得て、地域に必要とされるJR東日本」の理念と良心を、私は信頼したい。
2025年03月20日
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