戦後80年、考えよう、戦争と沖縄のことを 2025年9月18日
・加速する米日軍事一体化と戦争準備 2024年10月、自衛隊と米軍を合わせた参加人員約45000人という、過去最大級の日米共同演習が、沖縄周辺の南西諸島と九州を中心に、沖縄から北海道まで全国各地で行われた。もし台湾有事(=戦争)になってアメリカと中国が戦争になった時に日本の自衛隊も参戦する事態を想定したものとみられる。有事が起きれば、基地も弾薬庫も軍事共用化された空港も港も、真っ先に攻撃目標とされる。
沖縄周辺南西諸島の軍事基地化は凄まじいが、沖縄だけでなく日本列島の各地で弾薬庫の増設計画が進んでいる。弾薬庫は有事の際に攻撃対象になることや爆発事故のリスクがあり各地で住民が反対運動をしている中、防衛相は全国11カ所57棟の増設を公表した。沖縄では戦場に備えて住民の避難訓練まで行わせている。自衛隊と米軍は地域住民も巻き込まれて被害が及ぶことも想定した共同軍事作戦を立てているのだ。
この日米軍事一体化は、2022年岸田政権が国会での議論を抜きに閣議決定した「安保三文書」による大軍拡と軍事費膨張の一環である。他国攻撃が可能で脅威を与える長射程ミサイルなど、攻撃性の高い兵器の保有は「自衛のための必要最低限の範囲」を超え、憲法第9条に違反する。更に軍事費の膨張は軍需産業(兵器産業)に莫大な利益をもたらし、政府は軍需産業支援法を制定して、武器輸出の促進も打ち出している。このままでは日本も米国のような武器輸出で儲ける「死の商人」国家へと変質しかねない。
更に大軍拡には実戦部隊の拡充も必要だ。しかし、少子化と紛争地派遣のリスクも知られるようになり自衛官応募者が激減している。政府は自衛官募集のDM用に自治体に18歳や22歳の若者の住所、氏名、生年月日、性別の個人情報の提供を求めていて、2024年度は全国の1139市町村、全体の65.4%が提供している。それは新たな徴兵制にもつながりかねない問題。
米日軍事一体化は不平等な日米地位協定の延長線上にあり、この軍事優先の国策は、結局はアメリカ優先、米軍優先に結び付く。主体性なき軍拡、主権なき「軍事大国」化といえる。「ルポ 軍事優先社会」-暮らしの中の「戦争準備」吉田敏浩著(岩波新書)より
・沖縄と差別 1952年沖縄が米軍統治下になった時の日本の米軍基地の比率は本土(沖縄以外の日本)が90%、沖縄が10%だった。1972年沖縄が日本に返還された時は、本土50%、沖縄50%であった。2022年では本土約30%、沖縄約70%である。本土復帰(沖縄返還)で、これで米軍基地が返還されると喜んだ沖縄だが、逆に国内の米軍基地を押しつけられた。日本国土の0.6%しかない沖縄にだ。いま基地の普天間飛行場から辺野古に移転することに沖縄県民の8割が反対している。
ただの飛行場移転ではない。辺野古の海を埋め立てて造られる岸壁には、航空母艦の着岸が可能になり、欠陥機で危険なオスプレイが100機常駐という拡大新基地である。その海底地盤は軟弱でどれだけ土砂を埋めればいいのか、国民の税金だ。その土砂も沖縄戦の遺骨が混じっている土地からので抗議されている。
そんな沖縄県民の声を無視して強行し、反対住民に機動隊まで出して逮捕するなど、この国に民主主義はないも同然。沖縄は国に捨てられた、棄民政策だと怒っている。政治家と官僚の中央エリートによる棄民政策。沖縄は米軍基地があることで、米軍の犯罪と暴行が今でも繰り返されている戦場だ。「沖縄と差別」佐藤優 金曜日より
・映画「ティダの運命」 沖縄復帰後の8代の知事で第4代大田昌秀と第7代翁長雄志のドキュメンタリー映画。80年前の終戦間際、本土決戦を防ぐための犠牲に沖縄を戦場にされて、米軍に降伏するなら住民は自決をしろと強要もされ、住民の4/1の24万人の死者を出した。その後米軍統治下の沖縄ではいわゆる「銃剣とブルドーザー」で住民は住宅や畑をブルドーザーで踏みつぶされ、銃剣で恫喝され、軍用地として土地を強制接収された。米軍統治下では沖縄住民の財産権は否定され、基本的人権、生存権すら軽視された。思いやり予算(米軍駐留経費の日本負担)を含む日米地位協定により、米軍機の騒音公害や暴行事件、基地からの環境汚染(PFAS)など、いまだ米軍による人権侵害にまったく歯止めをかけられない。
「日本人は醜いー沖縄に関して、私はこう断言することができる」太田昌秀元知事の著書「醜い日本人」の冒頭の言葉。この著書が沖縄返還の前の1969年に出版されたことに考えさせられる。「沖縄の住民は一度も米軍に自ら土地を差し出したことはない!」と少女暴行事件や教科書検定※に反対して集まった県民大会で知事は断言した。本土の平和な社会は、沖縄の人たちの日常の犠牲と苦しみの上にあるという現実がある。
※安倍政権下で2008年から高校教科書に沖縄戦の集団自決に日本軍が関与した記述の修正問題に、歴史の事実に反すると2007年11万人の県民大会。
<政治的な問題を考える時、最初にある率直な直感はとても大切である。たとえ事情に通じていなくても、「これは何かおかしい」という感覚から、「なぜこうなっているのか?」という問いかけが生じ得るからだ。その意味でいかなる直感も大切にされなければならない。「民主主義を直感するために」國分功一郎>(「沖縄と差別」より)
いま、情報を疑わない、調べない、諦めやすい、直感が鈍っている現代人が増えているのではないか。
日本は憲法9条があり、戦争ができない、武器を持たないという平和憲法で80年間戦争をしないできた。しかし自民党政権は改憲目指し戦争へ着々と進めている。軍事優先の国策と棄民政策。棄民政策は沖縄の問題だけでない。軍事費の拡大で社会保障費が削られている。憲法が保障する生存権よりも軍事を優先する国策で、赤ちゃんからお年寄りまで安心して暮らせていけるのか。いつのまにか戦争!にならないように。